タオル

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 昨日から絶え間なく雨が降りつづいている。洗濯物は乾かない。これが梅雨だ。よいではないか。

 8月末に1週間ものまとまった休暇をもらえることになった。その休暇を使って小豆島に行こうと思う。もちろんテント旅である。
 なんだか、せっかくのまとまった休みなのに瀬戸内のチャプチャプさざ波というのもムナシイ気がするが、春の神島で嵐に見舞われた後なので少々おじけづいているのだ。べつに大冒険がしたい訳じゃないんだから、これでいいのだ。瀬戸内の海に足を投げだしてビールを飲むのだ。
 そして小豆島の旅は単独行である。

 行くとなれば気になるのが、瀬戸内でウマイ魚は何であるか、それは釣れるのか、ウマイ貝は元気よく岩にへばりついているか、という問題である。
 今回もきっとビンボー旅なので、小料理屋で刺身盛り合わせ、とか、市場で箱買い、とか、そういうのは無理っぽい。
 つまり自分で食う魚は自分で釣る、もしくは突かねばならぬ。食いたい貝は自力で岩からはがさねばならぬ。毎度ながら、今回もこんな塩梅なのである。

 まあいつもこんなことばかり書いているので、ぼっくりはさぞかし凄腕の釣り師なのだろうな、と思っている人は間違いである。
 釣り師といえば、専用のベストを着てズックを履き、潮をキッと睨んで仁王立ち、道糸2号、ハリスは0.8号のウキフカセ仕掛け、針はもちろん「がまかつ」に決まってんだろバカヤロウ!という想像をしがちである。
 が、俺の場合は糸も針もテキトーで、ウキにいたっては拾い物で間に合わせてしまう。エサは、オキアミとかいう小エビ。安いから。
 どこに行っても同じ仕掛け。だからあんまり釣れないのである。マヌケにも俺の仕掛けにかかってしまうのは、フグか小アジくらいなのだ。
 フグは食えないけど、小アジは「小」を除けばアジはアジ。手のひらくらいのまだ子供のアジも、せこせこと3枚におろしたら、ニンマリと不敵な笑みとともに食っちまう。リリースなんてファックだ。

 そうやって小アジばかり釣っていたので(小アジしか釣れないので)、小アジ料理はけっこう上手くなった。
 まずは、3枚におろして2切れしかとれない「刺身」。2口で1匹をたいらげた!という達成感もひとしおである。
 そして似たようなものに「にぎり寿司」。これも2口で(以下同文)。
 次は「天ぷら」。でも身が縮んでもったいないからあんまりやらない。
 天ぷらつながりとして「南蛮漬け」というのもある。しかしこれも面倒だからあんまりやらない。
 よくやるのは、ブツ切りの刺身を醤油漬けにした「ヅケ」とか、味噌とネギを加えて包丁でたたきまくった「なめろう」である。これは保存も少しはきくし、簡単だし、なにより酒によく合う。

 ああ、なんか想像しただけでコーフンしてきたぞ。今はザバザバと雨降りだけども、小豆島単独テント行ではきっとでっかい夏空に、堂々とした入道雲が浮かんでいて、ビールはきりっと冷えているのだ。むふふ、むふふ…
 待ってろよ小アジども!

 と、窓にむかって高笑いをぶちかましてみたら、窓の外でダッチョが洗濯物を干していた。乾かないタオルを気にするダッチョの背中にも、まだ梅雨の気配は濃厚である。