祭りの夕暮れ

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 壇尻船はそのまま外海に出て行くのか!?と思ってハラハラしたが、難なく湾内のはじっこにある家島神社のあたりに身を寄せていき、そこで一踊りしたあと、祭りの一行は山のうえにある家島神社の境内へと入っていった。
 …と、ここからも詳細を書き連ねていきたいところだが、相変わらず獅子が舞っており、なにやら意味深な儀式のようなものが所々にちりばめられてはいるものの、ごくごく淡々と祭りは進行していくので、シャッターチャンスはあるものの、いざ文章に書こうとしても同じような描写になってしまうのである。困った。
 そこで強引にこの話は早送り進行とさせてもらうのだ。家島天神祭には申し訳ないんだけども。

 その後2時間ほど家島神社の境内で獅子が舞ったあと、祭りの一行はまた海辺にとめてある壇尻船に乗り込み、真浦港へと出航していった。俺は旅館はりまのおっちゃんとしばらく海辺でマスタードたっぷりのフランクフルトを食いながら話したあと、なんだかエキゾチックに美人なおねえさんの運転する車に乗せられ、陸路で真浦港へ戻った。またここで祭りの続きを撮れと言われるのかと思ったら、俺には一向にお構いなしで、今度はほったらかし、あんた勝手にしておくれ状態なのだ。まあ、やっとここでゆっくりビールを飲みながら祭り見物となったのである。

 出店のならぶ路地をふらふらと歩き、カラアゲ串を2本買ってビールのアテにする。港の岸壁から足を投げだし、夏の夕暮れのセミの音とそよ風をやんわり受けながら、淡く淡く酔っていった。すぐそこでは停泊している壇尻船のうえで今日の演目が繰り広げられており、祭囃子が、日焼けで火照った頬や首筋をなでていく。子供たちも浴衣姿でキャッキャと走り回ったり獅子の舞いを眺めたり、大人たちはやはり酒をのみ歓談をし、みんなこの空気そのものを楽しんでいるようだ。ずっとここでこうしていたいなぁ、と思ってしまうのだが、次の船で大阪に帰らねばならない。明日もまた仕事があるのだ。

 酔いもほどほどに、夜8時の最終の船便で家島を離れた。船の窓からは、まだまだ夜更けにむけて熱を帯びていくであろう祭りの明かりが、ぼんやりと、暗くなった空の下で少しづつ小さくなっていった。耳の中に、この2日のあいだ聞きつづけた心地よい祭囃子がこだましていた。