鉄は熱いうちに打て!

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 これぞ秋晴れ!という感じに天気がよかったので、近所の公園でナガチャン、ショウゴといった友達とサッカーの練習をしていた。まあ練習と言うのは大袈裟で、かなりチンタラとただボールを蹴っていただけなのだが、今の季節にしては暖かく、少々汗もかいていたので「んむ、いい具合に運動しておるぞ」と体感的に感じていたのだ。まあいい。
 ちょうど小学校の下校の時間なのか、ランドセルをしょった小学生たちが道をブラブラ帰っていくのが見えた。俺らはそこでベンチに座り一休憩、水を飲みながらそれを眺め、なんでランドセルはあんな形なのか等ぼそぼそと喋っていた。下校中の小学生は何組かの仲良しグループごとにかたまって歩いているようだ。
 そのうちの男の子ばかりの一つのグループが、公園前のバス停にあるプラスチック製のベンチをふざけて蹴りはじめた。二つあるうちの右側のベンチを蹴っている。左側のベンチにはお年寄りと三十代半ばくらいのオジサンが座っていたが、それを見てただ呆然としていた。
 そのうちベンチはベキッと鋭い音をたてた。ヒビが入ったようだ。そこで俺は「ごぉるぁぁああ!!」と必要以上に声を低くしてその小学生たちに叫んだ。するとなんだ。その小学生たち数人はビクッとして振り返り「ナンダあのアブナイヒトタチハ…」という目をしてこっちをみながら呆然としているのだ。いやいや、皆が座るベンチ蹴って壊したんだから怒られるのは当然だろうが…。と思いながらも俺はその「ナンダ…」の目の前に少しヒルんだ。
 すると俺の横に座っていたショウゴが「君らどこの小学校や!何年の何組や!背の順は何番やぁ!」とカナキリ声で叫んだ。そしていきなりジャージをヒザのあたりまでずり下げて立ち上がり、その格好で小学生をドドドドっと追いかけたので、小学生たちは少し錯乱気味に「あわぁぁぁぁ!!」と言いながら逃げていった。そしてショウゴはベンチに帰ってくるなり一言「マイケルジャクソン被告」。それじゃあ本当にアブナイヒトタチになっちゃったじゃないか。
 ふとナガチャンを見ると、涼しい顔で水をゴクゴク飲んでる。まさか関係ないフリか…。
 バス停の人を見ると、小学生の奇行を見るのと同じ目で俺たちを見ていたので、恥ずかしくなって別の公園に移動することにした。

 こんな感じで最近はちょっと友達の間でサッカー熱が再発してるので、熱が冷めないうちにフットサルの試合をすることにした。相手はダッチョのサッカー仲間。ダッチョの話によると、オッサン混じりの初心者レベルのチームらしいので、まあ何の心配もいらないだろうと楽観的に考えていた。圧勝しにいこうぜ!の俺の誘いに乗ってきたのは、イマエ・ナガチャン・ミチ・キシ・ミズシマ・カジ・ブッコ・ショウゴ・ダッチョ・俺の合計10人。圧勝だーと士気高く岩倉を出発した。しかし・・・。
 試合会場に着くなりビックリ、なんとまあ若々しくて強そうなチームだこと!ウェアの着こなしからしてサッカー経験者の雰囲気がプンプンしている。こっちは上下スウェットで一見パジャマみたいな格好の奴もいるくらいなのに。嘘つき!!と叫びながら一通りダッチョを叩きつつ渋々ハラを決め、すばやく着替えると、我先にとコートにとび出しウォーミングアップをする。何せ我がチームのメンバーは数年ぶりにボールをさわるような連中ばかりなのだ。その数年間のブランクをこの数十分の練習でカバーすべくボールの取り合いをはじめて、ほとんどパニック状態である。どう考えてもただの悪あがきである。一方、対戦チームはゆっくりと着替え、余裕の表情でコートに集まってウォーミングアップを始めた。チラチラとその様子を見てみたが、明らかに「うまい!」といった感じのボールさばきだ。こりゃマズイぞ。
 30分のウォームアップを終えて試合が始まったが、もう予想通りの結果であった。ものの数分で1点決められ、あれよあれよと2点3点、その後は手加減されてしまう始末だ。そしてなんと、ダッチョは相手チームの選手として試合に出ていた!見捨てられた我がチームはもう惨敗のヘロヘロで数試合をこなし、ヨタヨタと地元方面に帰り、皆揃って「ラーメン横綱」でビールとネギどっさりラーメンを食らった。家に着いたのは深夜3時である。

 次の日、8時に起床して近くのコンビニに集合。また今日もサッカーの試合なのだ。昨日の悪夢冷めやらぬ中、今度はフットサルではなく本当のサッカーである。しかも相手は高校生らしい。サッカーで高校生といったら一番バリバリの時期ですね、こわいですね、いやですね。と言いながら5人集まった。おれたちグランドの隅っこで温かいお茶でも飲みながら観戦していようネー、試合には絶対に出ないよネーとやたら女々しい言葉ばかり吐き、昨日の士気はもうすっかり消えてなくなっていた。今日集まったのは、少年サッカー時代のコーチに半ば強制的に呼ばれたからだ。まさかいきなり試合に出ろ!なんて言われないだろうと思いつつ、そう願いつつ、しかし、いざという時のためにウェアやスパイクをバッグに忍ばせていた。そして、それが間違いだった・・・。
 グランドに着くなり、メンバーが足りないから試合に出ろ!と言うのだ。しかも相手である高校生チームもメンバーが足りないらしく、選手をレンタルさせてほしいと言い出した。普段着で集まった俺たちオッサン5人は泣く泣くウェアに着替え、ウォームアップもなしに試合に投入された。
 試合が始まって「アレ?」と思った。相手の高校生チームがやたらと弱いのだ。サクサクとパスは繋がり、すぐゴール前まで攻めこめて、すぐ点が決まる。まあそれは良いのだが、混ぜてもらった味方チームが結構ハイレベルで、味方の攻撃ペースについていくのがしんどい。前半が終わる頃には10点近く決まっていたが、やたら走りまわってフラフラになってしまった。
 そして後半は高校生のチームのほうに混ざることになった。こっちはこっちで必死に守らなくてはならないのでしんどい。でもまだ無得点の高校生チームに点を取らせてあげたかったので、俺たちオッサンは頑張った。しんどくて鼻水やヨダレ垂れ流しながら走りまわり、なんとかパスを繋いで攻めこんで、最後に俺の「絶妙な!」スルーパスが通って、高校生が得点した。わははは!しかし・・・これがまた間違いだったのだ。
 試合が終わるなりコーチが近づいてきて「結構できるやんけ、で、来週の土曜にも試合あるから来いよ」と。地獄です。
 こんな感じで、我がチームのサッカー熱は、また急速に冷めつつあります。