我慢の貝汁

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 週末、両親がまとまった休みを取れたので、高知県に両親と俺とで旅行してきた。姉貴は仕事、妹は部活があるので来れなかった。
 今回は、車でののんびり旅だ。京都を出発して高速道路にのって淡路を縦断し、徳島で高速道路をおりて大きなうどん屋に入って昼メシを食ったら、高知の室戸岬までずっと海岸通りを走った。今朝はみんな揃って寝坊して出発が遅れたので少しペースを上げて走りたかったのだが、道路脇の小さな集落からオンボロ軽トラが出てきては次の集落までゆっくり走り、目の前から軽トラが消えたと思ったらすぐまた次の集落から軽トラが出てきてゆっくりペースで前を走るので、もうすっかり諦めて、こっちもゆっくり走ることにした。走っていてよく目についたのは「海賊料理」と書いた看板を出している店がやたらと多いことだ。でも高知は海賊料理が有名!なんてのは聞いたことがなかったので全てやり過ごしたのだが、気になって仕方がない。が、海賊料理の店には立ち寄らずに車は進む。徳島でうどんと丼物を食ったのでまだ腹が減っていないのだ。
 しかしまあ、なんて気持ちいい風景が続くんだろう!と感動しながらのんびり進むのはいいな。海は本当に気持ちがいい。室戸岬に近づくにつれ次第に波がばっさばっさと荒くなってきてワクワクする。接近中の台風の影響も少しあるのだろうか波は高く、サーファー達がその波に群がるように、嬉しそうに浮いていた。

 のんびり走っていたので、室戸岬にたどり着いた時にはもう夕方の5時だった。急いで室戸岬灯台のある高台に登り記念写真を撮って、室戸の海で手を洗ってまた記念撮影。なんだか気が急いているのは、ここからまだ40キロほど走らなければ宿に着かないからだ。日が暮れると道が分かりにくくなってしまう。それに、早く冷えたビールが飲みたい!
 しかし急ごうとしても常に目の前に軽トラが現れるので、夜須町にある宿に着いたのは日が暮れた7時だった。途中で買った缶ビールを冷蔵庫で冷やそうと思ったら、宿の部屋には冷蔵庫がない。夕食は大食堂で8時まで、風呂は9時までだという。この日泊まった宿は「海風荘」という国民宿舎で、一泊3800円の安宿なんだからいろいろ文句言うんじゃないよ、という雰囲気まる出しだったが、まあこっちも安いんだから何も文句ないけんね、とその雰囲気に従った。着いてほっこりしたかったのだが、なんだかバタバタ慌しくメシを食い、黙って風呂に入った。9時過ぎに部屋に戻りやっと穏やかな気持ちになって、ぬるい缶ビールで乾杯。K-1中継を見ながらゆっくり飲んでるうちに眠ってしまった。

 翌朝5時に起き、海風荘のすぐ目の前にある漁港でイカ釣りをした。そーっと靴をはいて部屋を出たつもりが、物音でオカンが起きてしまって、釣りについていくと言い出したので、まだ暗い道を二人で漁港までボーっとした頭のまま歩いた。
 漁港に着くともうすでに釣り人が数人いた。俺もイカ釣りの仕掛けをセットして海に投入、しばらく反応なし。堤防を見渡しても、イカが墨を吐いた跡がない。少なくともここ数日はイカがあがってないのだろう。それからもずっと反応がなかったので、地元の釣り師らしき3人組のジイチャンに声をかけてみると「イカ狙うには1ヶ月遅いじゃろー」と返ってきた。この辺りではイカ釣りのシーズンは短いのかな。俺がぜんぜん釣れないので、オカンは飽きて宿に帰ってしまった。俺と同じくアオリイカを狙ってる若いニイチャンが近づいてきて「墨の跡ないね、ダメなんかなぁ」と言った。その後もしばらく粘ってみたが、全く反応がないので俺も宿に戻った。

 大食堂で朝食を食ってすぐチェックアウトし、今晩の宿「筆山荘」のある高知市に向かった。昨日の走行距離は400キロほどだったが、ここから次の宿までは30キロあまりなので、すぐ宿には向かわずに夕方までドライブすることになった。まず竜馬像を見に桂浜へ。この辺りが高知観光の要らしく、観光客がわんさかいた。それに混じって俺らも竜馬像前で記念撮影。だがしかし人が多すぎてくたびれるので早々と退散した。そのまま桂浜沿いを西に走って、昨日気になってた「海賊料理」の店を探すことに。ずーっと走ったが一向に海賊料理の店は現れない。そのうち怪しなドライブウェイに入ってしまい、どんどん山を上っていく・・・。んん、山の上に海賊料理は無いだろうと、なんだか皆ムスッと黙ってしまったが、しかし!そのドライブウェイから海が目下にドーンと広がっており、もう3人とも目をキラキラさせて海を眺めながら走った。次第にドライブウェイは高度を下げていき、浦ノ内湾というところに出た。そこにあった!目に飛び込んだ「海賊料理」の看板に歓声をあげながら車を止め、店にずかずか入っていった。その店は「浮橋」という名前で、浦ノ内湾に浮いた屋根つきのイカダのような感じでなかなか趣があった。
 「海賊料理」の正体は、活きた貝類を網の上で残酷焼きにしてポン酢で食う、というものだった。長太郎・流れ子・さざえ・はまぐり・あさりがどっさり用意され、それを自分で網で焼く。磯の匂いにたまらず、俺とオカンは生ビールを注文してしまった。カツオのたたきも2人前頼んだのだが、今まで食ったことのないほどうまかった。滑らかでエグさが全くなく、つるつると喉を流れていくカツオのたたきに感動。目の前ではアツイアツイ!と貝たちが踊っている。もう顔の筋肉全部緩めてビールを飲んでいると、はっ!!俺の隣でビールをぐっと我慢して貝汁を飲んでいるオトンの姿が・・・。オトンは車の運転があるので我慢していたのだ。さぞツラかっただろう。はっはっは。