2割増

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 どうも京都のように地べたに座り込んでボーっとできる雰囲気ではなかった。気持ちいい川原もなければ公園のベンチもない。こまったな、と思いながら歩くしかなかった。仕方なく、どこかに向かってるかのような顔をして歩いた。路地を抜け横断歩道を渡り駅に入っては出て買う気もないのに店をウロチョロし高層ビルを眺め信号待ちをし歩き疲れたなぁとぼやき腹減ったなぁと腹をさすり眠い目をバチバチさせたりして時間を潰した。が、いい加減歩き疲れた。もう正午前になってた。

 あまりにも足が疲れたので平泳ぎでホテル近くまで戻った。そこで見つけたのがマンガ喫茶。10分50円、安い!とは言うものの、立ち止まるたびに金が飛んでいくトーキョーに不満を感じた。こうなったら静かな個室でカップ麺ズルズルいわせてやる!!と逆上し、電気ポットのような顔をしてマンガ喫茶に乗り込んだ。

 案内された個室は、個室とはいえ便所の近くで何かと騒がしい。特に何をしたかった訳でもないのでボーっとしてた。この後に就職面接が控えてるから気分的にもリラックスもできず。緊張を紛らわすために、カップ麺を食うことに全精力をつぎ込むことにした。一番でかいカップ麺を買い、お湯をジャバジャバ注いで3分待ち。目の前のパソコンでインターネットができる。特に調べたいことや知りたいことも無いけど、せっかくやから「カップラーメン うまい 食い方」で検索をかけてみた。おぉ・・・出るわ出るわ・・。検索に引っかかったサイトの一つを開いてみると、「カップ麺の正しい食べ方」なる見出しの下に長々とカップ麺について熱く語られていた。それを飛ばし飛ばし読み(だってもうすぐ3分経つもん)、面白い言葉を見つけた。
 「カップラーメンは決してラーメンでは無い。カップラーメンはあくまでカップラーメンという食べ物であると心得よ。そしてラーメン屋に行った後には決してカップラーメンを食べてはいけない。なぜならカップラーメンは、ラーメン屋に行く為のプロセスだからである」
 ほほぅ、なるほどね。なんて読んでるうちに7分も経ってしまったが、これは決してラーメンでは無い!と思って食べると美味しさも2割増。麺が伸びて量が2割増になってる事にまで喜んでしまった自分はホンマに貧乏性やなぁと再確認し、ちょっと落ち込んだ。そしてそのサイトに書かれている通り、スープの一滴まで飲み干し、静かに合掌した。

 マンガ喫茶の個室でモジモジしてるうちにホテルのチェックイン時間が来た。ホテル、と言うと聞こえはいいけど実は今夜泊まるホテルはカプセルホテル。こいつもまた人生初体験となる。自分が閉所恐怖症でないことを祈りつつ、足早にカプセルホテルに向かった。