単純五輪馬鹿頭におけるバファリンの効能

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 先日、久々にフットサルをした。フットサル場に行く前にダッチョの家でサッカーゲームをしていたのだが、やっぱり俺はTVゲームが苦手である。うまくコントローラーを扱えずにイライラ度35%を抱えたままフットサル場に向かうことになった。
 MKボウル上賀茂店のフットサルコートが会場で、4階にあるコートに向かうエレベーターの中で偶然にもDJ仲間のMARTAくんとサッカー部時代の後輩コタニくんに遭遇。聞かされていなかったのだが、なんと今から一緒に試合するメンバーだったのだ。それに気持ちが和んだのもつかの間、試合が始まると自分のプレーのデキの悪さにイライラ、イライラ…。バファリンの半分はやさしさで出来ているというが、俺の半分はいまイライラで出来てるぞオラァ!という気分で試合を終えてしまう。
 それに対してダッチョは楽しんでプレーできたみたいで、うらやましい気持ち半分、こんなことでイライラしてしまってまったく自分は子供だなぁ…という情けなさ半分。
 帰って風呂に浸かっていると「今日のイライラはぜーんぶTVゲームのせいにしてしまおう」という気分になり、イライラはせっけんのアブクもろとも排水口に流してやった。

 すっきりした気分で部屋にもどってテレビをつけると、トリノ冬季五輪のカーリング日本女子チームの試合の再放送をやっていた。焼酎をすこし飲みながら見ていると、一度見た試合なのにまた熱中してしまって、そのまま冬季五輪の閉会式まで見てしまった。窓の外はすでに明るくなっていて、時計を見るともう朝の6時半になっていた。睡眠サイクルがすっかりトリノ時間になってしまっている。
 トリノ開幕前はまさかこんなに毎日テレビにクギ付けにされるとは思っていなかった。立役者はずばりカーリングである。今回のトリノ冬季五輪ではスノーボード・クロスやスケート・ショートトラック、アルペン回転なども面白かったのだが、これらは試合がアッという間に終わってしまう。しかしカーリングは予選から各国チームと総当たりだし予選だけでも長期間にわたって楽しめて、さらに1試合が2時間以上と長いのでたっぷりじっくり楽しむことができたのだ。

 今回の冬季オリンピックで初めてカーリングを見たのだが、普通なら初めて見る競技を2時間以上も見るのはしんどいものである。まずルールも知らないし、よくわからない専門用語だらけだし、どこが勝負のヤマなのかもわからない。しかしこの点は小林宏氏の絶妙な解説のおかげで、初めての俺にもコーフンの2時間を味わうことができたのである。
 小林氏は日本カーリング協会理事を務めてらっしゃるそうで、カーリングのルールや日本チーム・相手国チームのねらい、選手の発するかけ声の意味から次にとるであろう戦術とその難易度まで、試合がつづく2時間のあいだにじっくり説明してくれたのだ。決して難しい言葉を使わず、あくまで初めての人が見てもわかるように簡単な言葉を選んでの解説がうまく、俺のようなにわかファンでもその勝負の熱や選手の心理にまで迫ることができ、まさに息をのむスリリングな2時間となったのである。
 カーリングはメチャクチャ楽しいスポーツだった。それを白熱の試合を通して教えてくれた日本女子チーム(チーム青森)の小野寺歩選手・林弓枝選手・目黒萌絵選手・本橋麻里選手・寺田桜子選手、選手を支えたチームスタッフのみなさん。チームは予選敗退となったけれど、素晴らしかった。小野寺選手・林選手は今シーズンで引退も考えているようだが、ぜひぜひ現役続行してもらいたい。両選手が現役であり続けることが何より今後のカーリング普及の布石になると思う。
 そしてやっぱり解説の小林宏氏と実況の刈屋富士雄氏のコンビは今回のオリンピックのなかで金メダル級の存在だった。
 女子チームの試合が終わったので、次は男子チームを応援するぞ!と思っていたら、いつの間にか男子チームの試合は全日程終了してしまっていた。いつ放送していたのだろうか!?くやしすぎるぞ…。

 カーリングの他にもいろいろ見た。
 アルペン回転も面白かったのだが、皆川賢太郎選手が2回目の滑走でトップタイムをたたき出してからは、その後に滑走する外国人選手の失敗を願うばかりで、スポーツのこういう見方もなんだかなーと思った。けっきょく後発のオーストリア選手3人が皆川選手のタイムを上回り、4位となったが日本人選手としては快挙らしい。僅差だったので悔しいなぁ。しかし順位など実はどうでもよく、滑る人みんなしなやかに足をくにゃくにゃさせてコースをクリアしていくし、みんなすごいなぁ上手いなぁと思いながら見ていた。
 アイスホッケーも派手で暴力的な反面じつに繊細なパックさばきで面白かったのだが、やっぱり日本人チームが出場していないだけに物足りなさもあった。
 リュージュはけっこう食い入るように見た。わずかなミスがタイムや順位に大きく反映されるので、女子の原田窓香選手の滑走の時などはひとつひとつの小さな挙動のたびにワッ!とかアッ!とかいう原始的な叫び声をあげてしまった。しかしこの競技は圧倒的にデブのほうが有利でズルイじゃないか!と思ったのだが、体重の軽い選手は重りをつけていいというルールがあったりして、一概にデブ有利、というわけじゃないんですね。
 スノーボード・クロスの千村格選手の滑りは見モノだった。何度ぶつけられてもタフに耐えぬき、クオーターファイナルでは負けてしまったけれどもアツく応援できた。女子でも藤森由香選手が健闘してなかなか見モノだった。残念ながら日本人選手は残れなかったビッグファイナルでは、ほぼ優勝確実だったアメリカ人選手がゴール手前のジャンプでメイクを入れようとして着地に失敗、ブチこけてしまって後続選手にスイーと抜き去られていく様子には、悪いけど大爆笑した。
 フィギュアスケートも見たけど、やっぱり採点される競技はなんだか釈然としなくて自分には合ってないな、と思った。フィギュアスケートは順位など気にせず見るのがいいのかな。
 スケート・ショートトラックはなかなか位置取りが難しいみたいで、氷上の競輪みたいだな、と思った。スピードスケートはチームパーシュートが五輪競技に追加されたり、ますます自転車競技のトラック競技みたいになってきたな、という感じだ。そういえばスピードスケートの選手がシーズンオフの練習に自転車競技を取り入れたりしているし、通ずる部分が多いのだろう。
 
 こんなわけで、俺にとってトリノ冬季五輪は予想をはるかに上回る楽しさで、期間中テレビにクギ付けだった。そして今回の冬季五輪では日本選手団のメダル数がフィギュアスケートの荒川静香選手の金メダル1つのみだったけど、逆にそれによって順位にばかりこだわらず、純粋に各競技のそれぞれ持っている本来の楽しさに迫ることができたので、これはこれで良かったのではないかと思う。現にあまり期待していなかった俺が閉会式の最後まで見てしまうほど、思い出深い大会になったのである。いやぁ、本当にトリノは楽しかったなぁ。
 そして閉会式までみっちり見たあとに残された問題は、己の睡眠サイクルをトリノ時間から日本時間に戻さなければならないことである。

 そんな睡眠サイクルのズレがたたって体調を崩したのか、フットサル翌日から風邪をひいて熱が出た。体温計ではかったら38.5度もあるじゃないか。用心してあまり動かず部屋でゆっくり寝ていたのだが、その翌日になっても熱は下がらなかった。
 ダッチョが以前勤めていたアウトドアショップの棚卸のアルバイトに呼ばれていたのだが、体調不良のまま行く羽目になった。地元岩倉の友達ヤスと、フットサルのときに知り合ったヒークン、それにダッチョも一緒だったので気分はよかったし作業自体も単調でしんどくなかったのだが、作業の最中ずっと体がギシギシとだるいので参った。
 与えられたのはその店の釣りコーナーの棚卸作業で、目の前には釣り好きにはタマラナイほどまぶしく輝くルアーの数々…。先日の福井県単独行ではフグしか釣れなかったヘボ腕釣り師だというのに、これだけの釣り具に囲まれているとなんだか一流エキスパート釣り師にでもなったかのような錯覚におちいって、懲りたにもかかわらずまた釣りがしたくなってしまった。まったく自分の単純さにはあきれる。

 作業は夕方に終了した。事務所で日当をもらい、家に帰った。そしてまた部屋にこもって息をひそめるように布団にもぐり、半分がナントカでできているバファリンを2粒飲んでこれを書いている。