僕の素晴らしきカバン

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 ずっとお世話になっているカバンがある。特段、それを奮発して買ったという記憶もないし、惚れ惚れするカッコよさもない。ただ、俺はこいつが好きだ。今でも愛用している。
 仕事用に買ったなんでもないカバンなのだが、容量に無駄がないというか、すこし小さめで少しの余裕もない。しかし、そこがいい。

 いつも、どこに行くにも俺は荷物が少なくて、荷物の多いときといえば、じっくり撮りたい対象があるときのカメラ撮影機材を一式もっていくとき。それも稀だ。このかばんはその小ささのおかげで、もってくもの、もってかないものの判断を毎日おれに迫ってくる。それが毎日の仕事前の儀式のようであって、キッパリと仕事の脳ミソに移っていくことができるのだ。
 このかばんは仕事用に買った、というか、仕事を探すときに買った。就職活動のときに買ったのだ。薄っぺらくて、紙のたぐいしか入れる気がない!というペラペラかばんである。今それに弁当箱を横向きに入れ、水のペットボトルを差し込み、ネスカフェのコーヒーの粉のボトルを寝かせて入れている。

 無印良品のうすっぺらなビジネスかばん。俺の好きな黒だ。こいつとともに冷え切った就職戦線をラッキーに切り抜け、学生から社会人へと成長していく過程を共にし、餃子の王将の脂ギトギトの床に放り投げられ、ときには弁当箱から汁が漏れたりして汚れてしまったかばんだが、こいつが好きだ。なんだか大好きなのである。