カッとなってつい…

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 「カッとなってつい・・・」って言葉を最近よく耳にする。おぞましい事件のニュースで聞くことが多い。その事件とかを許す気にはなれへん。というか許す必要は無いな。でも「カッとなってつい・・・」って言葉は好きや。なんか「カッ」の部分に、ヒトっていう動物の、動物としての本能みたいなんが見えるからかな。

 「カッ」っていうともちろん怒って瞬間的に頭に血がのぼった時の表現で、同時に、目の前が真っ白になったり、体の底から熱いもんがドッと湧き上がるような感覚を経験する人は多いと思うし、俺もそうなる。でもいろんな感覚をよくよく思い返してみると、同じ感覚を味わう時ってのは必ずしも怒った時だけでは無い。
 例えば魚釣りしてて、ぼーっと眺めてたウキがスッと海中に消える時にも、腹からボウッと火が噴き出すような感覚に襲われる。感動的にビールがウマかった瞬間には目の前がぐっと白く曇るし、犬のかわいい表情をふと目にした時にも胸の中がぐあっと一瞬で沸騰する。すごくイイ景色を見た時も、思いがけなくイイ曲に出会ったときにも、春が近づいてることを感じた時にも、とにかく、いろんなところでその感覚に襲われてる。
 反対に嫌な場面でもその感覚を味わう。例えば学校のレポート提出期限が明日やってことを思い出した時とか、財布を落とした時とか、悲惨なニュースを見た時とか、終電に乗り遅れた時とか。まぁいろいろと書いたけど何が言いたいかって言うと、いろんな場面で同じような体内の感覚を感じてるのに、その感覚をうまく一言で言い表せてるのが「カッ」っていう怒りの場面の表現だけ、ってことがくやしい。どうせ同じ感覚なんやから、喜怒哀楽を感じた時のあの感覚をうまくまとめて表現できひんやろうか、と考えた。

 そこで思いついたのが「へあっ」。できれば「へ」は力なく弱々しく発音してほしい。ここでのアクセントは「あ」にある。わんぱくでもいい。たくましくチョメチョメ。
 釣りのウキがすっと沈んだ瞬間は「へあっ」って感覚になるし、ちゃんと針にかかってる感触がして初めて「きたぁー!!」って感じになる。ウキは沈むけどなかなか針にかかってくれへん時は「へあっ」「へあっ」って感じで、ウキすら沈まん時は「へあっ」も無い。でも、釣りをあきらめて周りを見渡したときにそこが思いがけなく絶景やった事に気付いた瞬間には「へあっ!」ってなる。風に春を感じた時には「へあーっ」ってなるし、レポートの期限を忘れてた時には「へあっ!!!」ってなる。
 我ながらいい表現を思いついたな~と思う。「カッ」なんかよりだいぶ使い勝手もいいしな。うんうん、よくやった。今後「へあっとなってつい・・・」なんて言葉がテレビから聞こえてきたら、いいな、日本っていいな、あははっ☆と思うとおもう。おもうとおもう。

 居酒屋「楽」で夫婦みたいに楽しそうに呑んでるボーボとハナエを眺めながら、だいぶ酔いの回った頭でこんなこと考えてましたとさ。