12月初旬のよく晴れた週末に、家族に時間をもらって単独釣行をした。
めざすは三重県の紀伊長島港。
この近くには何度か行ったことがあるが、紀伊長島港はこれが初めてであった。
さてさて、万年雑魚釣り師の僕ぼっくり、なにか釣れたのか!?
ムスコのくれた【釣守】
出発前にチョーナンが「これあげる!」と手渡してくれた。
【釣守】なるもの、手作りである。
安全にたくさん魚が釣れますように!だって。
オトーチャンうるうるしちゃうじゃない、よくツボを分かってるなぁ。
愛車のぽんこつ軽バンに、クーラーボックスといつもの釣具、そしてマットに寝袋などいつものキャンプ道具からぴっぴっと引っぱり出してきて雑に積んで。
【釣守】は大事にライフジャケットのポケットに仕舞い。
一泊の釣行くらいなら、準備は10分ほどだ。
家で昼メシを食ってから、なんか盛大に見送られつつ出発した。
はじめての紀伊長島港
家族を家においての単独旅なので、ちょっと高速道路にのるのも贅沢に思えて。
滋賀から紀伊長島まですべて下道で、おおよそ3時間半。
好きな音楽でも聴きながら進むと、なんてことない距離だ。
紅葉に高揚しつつ行こうよー。
何度か近くまで来ては通過していた「紀伊長島港」に、はじめて降り立った。
もう日の傾いた海は、風がきっちりと冷たいぞ。
港にはおおきな船が停泊し修繕工事をしていて、その存在感がドーーーンとすごい。
宇宙戦艦ヤマト?
…のちの夜釣りでこの船が活躍してくれるとは、この時は思いもしていなかった。
しばし海の景色をうっとり眺めたら、さっそく釣りの準備だ。
テレスコ竿の利点で、伸ばすだけでスタートできるのがいい。
もうこの手軽さを知ってしまったら、ほかの道具を使う気がなくなるね。
さて、海に立ってみる。
まわりの釣り人は10人ほどで、サビキだったりエギングだったりアジングだったりと十人十色だ。
もうマヅメ時でそこそこ水面が騒がしいが、なんの魚だろう。
最初はコトヒキ
ひとまずピチピチ跳ねてる小イワシっぽい魚にあわせて、5gのマイクロジグをキャストしていたら…
クククククッと小気味よいアタリ。
コトヒキ!
海のさかな図鑑とかで見たことはあったけど、食べられるのかな?
とまあ調べてるヒマもないのでキープ、なんか美味しそうだし。笑
日が落ちて薄暗くなってきてから、いよいよ本格的に海面がバチャバチャ騒がしい。
これは何のボイルなんだろう。
目と手元に集中しながら、表層にマイクロジグを通していく。
カツオいやカマスの一本釣り
…と、ここでまたカツン!と明確なアタリが。
「きたっ!」とアワセたら、強くアワセすぎた。
細ながい魚がポーーーンと空をとび、堤防のうしろ側の海に落ちる。
これじゃまるでカツオの一本釣りじゃないか。笑
となりでエギングをしてるカップルがくすくす笑っている。
まあオッサンはそんなことじゃ恥ずかしくも感じないほど、太く生きてんだけどなフッフッフ。
そういえば飛んでいった細ながい魚は、たぶんカマスだろう。
また手元に集中して…きた!
今度はじわりと巻きアワセにしたら、うまく乗ってくれた。
ちっちゃいけど今年初カマス、ありがとう。
この海面バチャバチャ騒ぎはカマスだと分かったので、とにかくカマスに集中してみよう。
宇宙戦艦レーザービーム
空はもう暗いのに、なんだか妙に海面が明るいぞ。
と思ったら、修繕工事中のおおきな船が夜通しで作業するのか、船のうえで煌々と明かりを灯しているのだ。
船からレーザービームのようにするどい前照灯も焚かれており、このあたりだけがずっと夕刻くらいの程よい明るさをキープしてくれている。
おかげでずっと夕マヅメの時合いように、海面バシャバシャのボイルが止まらない。
ずっとマヅメ時だなんて、なんてありがたいの。笑
だが…そのわりには釣れない。
おっとそうだ、僕ぼっくりは雑魚釣り師だった。
雑魚を釣るという意味ではなく、ザコの釣り師なのだ。
たいして釣れないのが標準なのである。
その後なんどもアタリを乗せられなかったりバラしたりしながら、それでも頑張った。
かじかむ手でなんとか糸を操りながら、寒さが超ニガテなぼっくり粘る。
なんたってポッケには釣守があるんだから、きっと釣れる!
いよいよ夜が更けてボイルもずいぶん静かになり、そして僕も眠くなってきた頃…
きたーっ!やっときた!
もう強くアワセないぞ。
聞きアワセのようにジワリといってから、クンッ!とすこし竿をあおって針掛かりさせた。
やったー!さっきより長くて太い!
もう今日は寒さと眠さでこれ以上は粘れないので、記念撮影して車に戻った。
いつも雑魚釣り師なのに、僕にしてはよく頑張った。
ありがとう、釣守!
晩メシはこれだけ
実はさっき夜釣りの最中、港のすぐ近くで目星をつけていたラーメン屋をのぞいてみたのだが、あいにくの売り切れ閉店であった。
ハラペコなんだが、持ってきたラーメンを作る気力すらもうない。
もちろん釣った魚を調理する気力なんてカラッキシないし、それに家族に見せる魚がなくなってしまう。
ここはもう、ひねり揚げと激安ビールで済ましちゃおう。
サクサクッ、グイッ、サクッ、グイグイッ、プハーッ!
と言っている間にとうとう眠さも限界がきたので、スポッと寝袋にくるまってオヤスミナサイとなった。
冬の朝マヅメあかん無理
僕のスマホは毎朝4時にアラームが鳴るのだが、まあ冬の4時なんてまだ夜なんだよな。
しかも1日のなかでいちばん気温が下がるのは日の出の直前だから、ここからまだ下がるわけだ。
もうね、海をまえに竿は構えているものの、あまりの寒さにほぼ目をつぶって戦意喪失してたよね。
ブルブルふるえるほど寒い風を背にうけながら、それでもなんとか淡々とキャストを続ける。
ジグヘッドワームにときどきアタリがあるんだけど、もうぜんぜん集中できなくてアワセが遅れちゃう。
ダメだ。
徐々に明けてくる空はとってもキレイなんだけど。
この最低気温の瞬間に僕は、鼻水をたらしながら白目をむいていましたね。
ぼっくり、寒さムリ。
けっきょく数回あったアタリをすべてスカし、朝はただただ寒さに凍えていただけであった。
これならぬくぬくと寝袋の中にいたらよかったなぁ。
もう釣りを諦めて、公衆便所に向かいがてら漁港をさんぽする。
市場ではもうすでに慌ただしく人々が働いていて、そしてその傍らのドラム缶の焚火がとても温かそうだった。
あの火にあたれるのは市場の人だけ。
いいなぁー。
ん?
そういえばガスコンロ持ってきてるし、インスタントラーメンもあるんだった。
よし、僕も暖をとろう!
ライター拾い
車にもどって、ソロキャンプ用のシングルバーナーにカセットガスをセット。
よし、点火っ!
点火したいっ!
……ライターないやんけ。
忘れてた。
ここにはラーメンも鍋も水もあるのに、湯を沸かせない、この絶望。
2分程もんどりうった後、ライター探しの旅に出る。
ライターなんて、どっかに落ちてるやろ。
海辺にはいろんな漂着物があるので、ライターを探すことに難はない。
だが「点く」ライターを探すのは至難である。
だいたいが壊れているか濡れているからだ。
テトラの隙間や砂地にじーーーっと目をこらし、ライターハンターになる。
…あった。
点くか?
ジリッ………ポ。
ついたーーーーーーー!!!
いきなりアタリをひき、はやる気持ちに早足で車にもどった。
ありがとう、サビサビライター。
絶望が希望へと…
うまいっ!うまいっ!!温かいっっ!!!
ありがとう、サビサビライター!!!
地磯に向かう
腹も落ち着いたので、一息ついたらGoogleマップで気になっていた地磯に向かってみた。
うん、良い感じ。
だけど先客が2組いるな。
周辺でぽちぽち投げていると、エギングをしていた1組がちょうど帰る様子だ。
挨拶をして、そのポイントに入らせてもらった。
残るもう1組のご夫婦とも話をしてみると、ノマセ釣りをしているのだという。
「でも釣れないねー」と、ちょっとのんびりしている様子だった。
周囲どこを見回してもイカの墨跡はなく、アオリイカも厳しいみたい。
テトラに乗って根魚ねらい、ジグ単で周囲をくまなく探る。
ときどき「ツン!」とアタるが、これはきっと小物だろうなぁ。
そうしてこのエリアを流してみたが…収穫は唯一この景色だったな!
けっきょくサビキっ
また紀伊長島港に戻った。
今回はできるだけ生エサを使わずルアー主体で釣りたい!というテーマがあった。
だけど、やっぱり〆はサビキかな。
なんでもいい、釣れてくれ!
ぴぴぴぴぴっと気持ちのよいアタリは、ウルメイワシだ。
淡々と手返しよくイワシを釣っていき、そろそろエサもなくなってきた。
そしてオオトリはやっぱりコイツだね、ふぐ!
コイツが出はじめることで「ここらで止めよう」という決心がつく。
今回もありがとう、ここで納竿します。
岡田屋 来々軒へ
じつは待っていた、昨晩フラレた「来々軒」の開店11時を。
開店凸の8人組ライダーにつづいて入店すると、
「あぁ!昨日はごめんね!また来てくれたんやねぇ!!」
と温かく出迎えてくれた女将さん、厨房奥から会釈してくれる大将。
ありがとうございます。
チャーシューメンと唐揚げを注文し、満足。満足。。
うん!!
大満足!!!
その味もさることながら、やっぱり人の温かさ。
僕も商売をしている身だから、この精神が身に染みてね。
しっかり腹も心も満たされました、ごちそうさまでした。
雑魚釣り師の心のささえ【釣守】
この単独釣行を楽しめたのは、ムスコのくれた【釣守】のおかげ。
やっぱ頑張ってカマスを釣っていなければ、寂しすぎる釣果にさすがにゲンナリしてただろうしね。
寒い寒いといいならが頑張れたのは、このお守りのおかげだったよ。
胸ポケットに家族がいるような心強さ。
ありがとうチョーナン。
そして、ありがとう紀伊長島港!
さあ、安全運転で帰ります。
帰ったらさぁ食べよう
「ただいまー!」
「おかえりー!!」
「オトーサンいなくて寂しかった?」
「べつにぃーーー!!」……おいっ!
というやりとりを経て、釣れた魚を公開する。
でんっ!!(などと言える釣果ではない)
「おぉぉーーー」と皆が声をあげたかと思うと、すぐにリビングに戻ってテレビを見ていた。
いいんだ、慣れてる。
この反応であっても己の釣りに満足できなくちゃ、雑魚釣り師はつとまらない。
さて。
ウロコをおとし、ワタを抜いて、開く。
いつもの腹開きだけでなく、背開きにも挑戦。
ガタガタだけど、まあいい。
コトヒキは適当に塩焼きにしてみる。
おっきいほうのカマスは包丁がギトッとするほど脂がのっていて、期待大である。
そして焼きあがり!
いただきます!
コトヒキうまっ!!
まるで鯛のように甘い身で、家族総出でつつくこと数十秒で姿を消した。
そしてカマス!
今回の主役、カ!マ!ス!!
脂が溶け出してカラメル状になってるぞ。
コトヒキの勢いのまま箸でつつきはじめたが、みんな次第に鈍化。
なぜ?
ゆっくりになりつつ、
「脂のってるデカイほう、なんか大味やね」
「痩せてる細いほうがウマイね」
とか言ってる。
あのな。
太い方はな、寒ーーーいなか【釣守】にパワーをもらって、頑張って釣ったカマスや!
そんなハズないやろ!!
「そんなもん太いほうがウマイに決まってる!」と、
鼻息荒く箸をブッ刺した僕ぼっくりも…
「あ、ホンマや。」
という結論に至る。
子供はホンマ正直やな。
ウルメイワシは丸干しに
そして今回やってみたかったこと。
「なんかの丸干し!」
このたった8匹しかいない、ウルメイワシでやってみよう。
ウロコを落としたウルメイワシを、およそ10%くらいの塩水に漬ける。
丸干しはふつうワタを抜かないらしいけど、抜いてみたよ。
これが成功したら、次はワタ入りにしようと。
1時間ほど漬けたものをサッと水洗いし、水気をとる。
そして串に通すんだけど…
目刺し(めざし)とはいえ、正しくは串をエラからいれて目に抜くのね。
知らんかったから、文字どおり目に通したよ。
それをネットの中に吊るし、一晩干したのがコレ↑。
うーん、まだちょっと生感たっぷり。
12月で気温も低いし痛まないだろうということで、さらに夕方まで干してみた。
そしたら、だいぶイイ感じに!
コレやー!
僕の好きな、ちょっと固めのウルメ丸干し!
じゃあ焼きましょ!はやく焼きましょ!!
魚焼きグリルをじーっと見つめながら焼くこと数分。
んまーーーーーーーっ!!!
カンペキに整ったっ!!
ありがとう、紀伊長島!!
(完)