なんで風呂に入らねばならんのか!
クタクタで仕事から帰宅すると、ムスコたちとオクサマが風呂でキャッキャとはしゃぐ声がしている。
冷蔵庫をごそごそして晩メシを探していると「ガタン!」と派手な音をたててムスコたちが風呂から飛び出してきた。
「オトーサンおかえりぃぃ!!」
と言いながら抱きついてくるのは嬉しいんだけど、なにせ仕事から帰ってきたばかりで僕は汚れているぞ。
「オトーサンうどんの粉だらけだから、裸でくっつかないほうが良いよ!」
と服を着るように促す。
僕ぼっくりは、うどん屋である。
うどんを練って打って切って売って…クタクタで帰宅したあとの「風呂」という、そのもう一仕事がめんどくさい人でもある。
ムスコとオクサマが出てきたから、次は僕の番なのだ。
あぁ…めんどくさい。
カラダが汗と粉だらけなのは分かっていても、めんどくさい。
めんどくさくても風呂に入らねばならんのは、汚れているんだから仕方がない。
あぁでも、仕方がなくてもめんどくさい。
せめて浴槽につかれば全身シャキーンと、すぐピッカピカになれる仕組みにはならんものか。
服を脱ぐのもめんどくさいし、風呂に入ったら入ったでゴシゴシと髪やカラダを洗う作業があるし、濡れたカラダは拭かねばならんし保湿剤ペタペタもしなけりゃならん。
風呂はめんどくさいのカタマリである。
湯に浸かるのは気持ちいい。
風呂がめんどくさいとは言っても、湯に浸かるのは気持ちいい。
冬にはぽかぽかに温まれるし、夏には低めの湯温でさっぱりできる。
「脱ぐ・洗う・拭く・着る」がなければ好きなのかもしれないなぁ。
脱ぐ着るは仕方ないとして、洗う拭くはなんとかならんものか。
せめて「洗う」だけでも無くなってほしい。
しかし基本的に、フロの目的は「洗う」だよなぁ…。
そうだ。
たとえば入浴剤に洗浄効果があれば良いんじゃないか?
海外映画のバスシーンとかで見るあの泡風呂みたいなのは、カラダも洗えるのか?
なんか浴槽に溶かし込むような洗浄剤はないのか?
よし、調べてみよう!
ということでスマホをぱらぱらと見ていると…有るんだなぁ。
おなじこと考えてる人がいるんだろうか。笑
泡風呂もだし、洗浄入浴剤みたいなのとか、赤ちゃんでもOKな沐浴剤なども洗浄効果があるらしい。
でも高い。んん…
でもこれがあったら、洗浄入浴剤のとけた浴槽でもぞもぞ動いてるだけでカラダがピカピカになるんじゃないか。
めっちゃ楽チンじゃないか!
ぽっかぽかのピッカピカじゃないか!!
とっとと入れ、うどん屋ぁ!
そうしてひとり晩メシをもぐもぐしながらスマホを見ていたら、すっぽんぽんで肩にタオルをかけたジナンが寄ってきて一言。
「オトーサンな、天ぷらのニオイしてるからな、早くごはん食べて風呂入ってきぃ。」
ん、ごもっともです。
なにを怠けたことを考えてたんだろ、うどん屋はいつもピカピカにきれいでなければならぬ。
店もだし、もちろんカラダもだよ。
「かしこまりました。」
そう言って僕は、今日も汗と油臭のしみたシャツをしずかに脱いで浴室に向かうのであった。