1日目っ
24日、出発の朝9時ぎりぎりまで雨が降っていて路面はかなりウェットだったが、7月のけいはんなサイクルレース優勝までのトレーニング計画のなかで、この淡路島一泊一周ははずずわけにはいかん。濡れたままの長距離走行で風邪をひかないかが心配だが、勝つためだ!ええい!!と大阪府守口市を予定どおり出発した。
まぁ、決行した本当の理由は「もう予約している宿のキャンセル料がもったいないから」なのだがナイショだ。
まずは淀川の河川敷を南下し、淀川大橋から国道2号線を明石まで。と、サラッと書いてみたが、これが予想していた以上に長い。交通量は多くはないが、普段は車の通らないサイクリングロード中心にトレーニングしてるからか、やはり車をストレスに感じてしまっていたようで、すでにけっこうくたびれている。それと、信号のストップ&ゴーも地味に脚にきているのだろう。幸いだったのは、雲が切れて太陽が顔を出してきて、路面が急速に乾いていっていることだ。
出発から3時間、やっと明石海峡大橋が見えてきた。これを通過して、その先にある明石港からジェノバライン(フェリー)に乗り、やっと淡路島の北端にある、岩屋港に到着。自宅からここまでの走行距離65km、やっと淡路島一周の始まりなのだ。
淡路島の海岸線にある国道28号線を時計回りに南下しはじめる。この時点で空はありがたいことに快晴になっていた。しかしなんだか足が重くて27km/hくらいしか出ない。そこで、ポケットに入っている好物のラムネをごりごりと頬張る。すこし元気がでて30km/hくらいまでペースアップ。なんだ、微妙にハンガーノック状態だったのかもしれない。ここから意識的に補給食を多めに摂りながらすすむことにした。
それにしても海を見ながらの走行は気持ちがいい。とてつもなく良い気分だ。気持ちよすぎて「ワーッ!」と叫びながらダッシュしてみたくなるが、それじゃあアブナイヒトだし、まあ先も長いので、ペースと興奮を抑えつつすすむ。
岩屋港を出発して25kmほどの地点、津名あたりで、なんだか背後に気配を感じる。信号ストップでちらっと振り向いてみると、サイクリストがひとり。信号が青になり走りだす。背後のサイクリストも同じくらいのペースで走っている気配。また信号ストップ。今度はおそるおそる挨拶してみる。
僕「こんにちは。」
サイクリスト「こんにちは、どちらまで?」
僕「淡路島一周に初挑戦してまして、島の南端の福良の町で一泊する予定です。」
サイクリスト「よかったら途中までご一緒しますよ。」
おなじ趣味をもつ者同士。サイクリストが仲良くなるのは、こんなにもシンプルで、とても気持ちよい。これも自転車の世界のいいところじゃないだろうか。名前は「とーるさん」という。洲本の街まで二人でローテーションしながらすすんでいく。とーるさんのペダリングは無駄がなくとても綺麗で、体型もフォームも美しい。サイクリストなら分かると思うが、そういう人のうしろを走っていると、前走者の足やケツなどをまじまじと眺めては溜息をついたりしてしまうのだが、決して「そっち系の人」ではないからね。これは勉強なのである。
そして洲本の街が近づき、朝の出発から微妙に気になっていたチェーンリングボルトのゆるみを締めなおすため、洲本の自転車屋に寄ってもらう。そのあと海岸ですこし休憩をかねてお喋り。言われるまで分からなかったのだが、今年で40歳になるのだという。少なくとも10歳は若く見ていたのでビックリしてしまった。やっぱりスポーツを続けている人は、若い!!サッカーやマラソンをかなり本気でやってきた方との事で、そりゃ無駄のない体つきをしているわけだ。知り合ってまだ1時間程度なのだが、きっとこれからも長いおつきあいになるだろうなぁと直感し、携帯番号を交換してもらってお別れした。とーるさんは洲本にお住まいだというので、次に淡路島に来るときもまたご一緒してもらいたいなぁ。
あまりここまで時間を気にしていなかったが、福良の町に夕方までに着くには、そこそこいいペースですすむ必要がでてきた。しかし、すこしは時間に追われたほうがダラダラせずにトレーニングになるので、このほうが良い。
洲本の街をすぎて県道76号線に入ると、一気に交通量が減って走りやすくなった。海岸線を快調にとばしていると、由良あたりで海をはさんですぐの距離に「成ヶ島」という島が見えてきた。僕は離島マニアでもあり、島を見つけると上陸したくなる。が、そんなことをしていては時間がいくらあっても足りないので、興奮をおさえ、携帯カメラに島の姿をパチリとおさめただけで「ワーッ!!」と叫んで通過。
続いて立川の峠へ。今日の行程のなかでいちばん本格的な上りだ。ここではあまり足を使わないようにギアを落としてスローペースでいく。ウワサには聞いていたが、道のいたるところに「ナゾのパラダイス」とか「UFO神社」だとか「モンキーセンターまであと7kmだよ」などと書かれた怪しい看板が連続して立っていて、おもしろいので勾配のキツさを感じることなく頂上まで来れた。けっこう標高をかせいだようで、海を見下ろす景色はなかなかのものだ。そのままズビューンと海にすいこまれるようにくだり、また海岸線の平坦路へ。車は一切走ってこない。
すこし路面が荒れていて、若干の向かい風。思ったよりペースが上がらない。しかし荒れたアスファルトをゴゴゴゴゴとすすむうちに、なんだか今年のパリ~ルーベ優勝者のスーメレンになった気分になり、テンションが上がってきて、スーメレンの鬼の形相を顔マネしつつペダルを踏んでいるうちにペースも上がってきた。いいぞ。(マニアックでごめん)
しかしここでまた海をはさんで近い距離に「沼島」という島が見えてきてしまった。この島は、以前に真剣に上陸を計画したが日程の関係で断念せざるをえなかった島である。鬼の形相はすぐに離島マニアの顔になり、ベンゾーさんのような顔になってしまったワタクシは携帯カメラをパシャパシャやりながら走る。もちろんペースは落ちてしまう。そのうち沼島までの船が出ている土生港が見えてきて、たまらずストップ。このまま船に乗ってしまったら…と想像をふくらましてしばし呆然としていたが、空を見上げて屁をイッパツかますと、ふたたびロードバイクに飛び乗って「ワーッ!!!」と叫び、福良の町への道をまた前進しはじめた。うしろなんて振り返るな!
まぁ実は、沼島へ渡るという想像中に「宿のキャンセル料」という言葉が頭をよぎったことで、一気に現実へと引き戻されたというだけのくだりなのだが。
そして灘の峠へ突入。なかなかの勾配の上りだ。すぐさま顔がコンタドールっぽくなってくる。けっこうすぐに頂上が見えて、コンタドールっぽく軽いギアのダンシングでクリアにかかる。下りで重いギアにシフトしスピードアップ、と思ったら、また急勾配の上りが目の前に。罠か!そう、急勾配の上りが断続的につづく、波状攻撃峠だったのだ。上り最強のコンタドールの顔はすぐに上り最弱の自分の顔にもどり、ひーこらひーこらと這うようなスピードに。しかしもう宿はきっとすぐだ。へこたれるな。
波状攻撃をなんとかクリアし、阿万から県道25号線へ。いよいよ宿のある福良の町が近づいてきた。また突然目の前に峠があらわれてビビッたが、波状攻撃ではなく単発の峠だったので一安心、頂上からはやっと福良の町が見えた。ギュンと下って、宿に到着。おつかれさま、俺。
無理をするほどではなかったが、それなりのペースで走ってきたのに、意外にも145km走った後のわりに体がまだピンピンしている。確実に体のコンディションが良い。
今晩の宿は「ビジネスホテル福良館」に素泊まり。なんとユニットバスとキッチンと冷蔵庫まで着いた4畳半の部屋で、なにかと便利でよかった。
そしてコインランドリーで今日着たウェアを洗濯してる間に、とーるさんがメールで教えてくれた福良の町でおすすめの和食処「鼓亭」で、淡路島牛丼と手打ちうどんのセットを食う。さすが淡路島、牛丼の肉もうまいが、中に一緒に入っているタマネギがとことんうまい!しかもなかなかのボリュームで、長距離トレーニング後の体にしみわたる。さらに手打ちうどんもコシがあって絶品であった。大満足。
さらに宿で地元の魚をアテに一杯やろうと思って、スーパー「キクカワストアー」へ。缶ビールと、徳島産天然ハマチ、淡路島の地ダコ、福良の釜揚げしらすを買う。
宿に戻って部屋の風呂で体をアツアツにしたあと、キンキンに冷やしたビールが胃袋にキク。そしてその中に地のハマチやタコやしらすを泳がせて、わが胃袋は竜宮城へと変化していったであった。
距離:144.4km
平均:24.6km/h
時間:5時間52分
2日目っっ
なぜか書きませんでした。笑
【完】