年越し釣り車中泊旅4日目。元旦の一番風呂とオハイの先に。

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夜明け年明け

年が明けた。

2025年いらっしゃい。

元旦、釣り車中泊旅4日目の朝だ。

旧型セレナから這い出した僕ぼっくりは、鵜殿魚港(うどのぎょこう)からヨロリヨロリと七里御浜(しちりみはま)へと歩き出した。

ここ鵜殿漁港は、22kmと長い七里御浜の始点にあたる。

この長い長い浜のどこかで、よい初日の出を拝もうという魂胆だ。

 

ガラリ、ガラリと、ブーツがゴロタ石を踏みしめるたびに音をたて、寝起きの僕をヨロケさせながら迎え入れてくれている。

ちょっと大きめの岩をみつけ座ってみては「もうちょい丸みがほしいな」とか「もうちょい水辺がいいかな」などとくりかえし、結局なんでもないゴロタ石のうえで落ち着いた。

 

風はないが、さすがに日の出前は一日でいちばん寒い時間帯。

顔もケツもよく冷えた。

初日の出まで、あと30分くらいだろうか。

気がつけばたくさんの人が、ガラッ、ガラッと音をたてながら集まってきていた。

みな寒そうにポケットに手をつっこみ、身をゆすっている。

若い子たちがグループで明るい声をあげ、じいちゃんばあちゃんは体をよせて小声で話をしていた。

新年はだれもが期待をもって明るい顔をするんだな。

いよいよ空も明るくなってきた。

ご来光!

初日の出だ。

あまり神様とかは信じないけど、自然は偉大だなぁ。

太陽というのは本当にありがたく感じる。

なんたって暖かい。

ここから左が22kmにわたる七里御浜だが、その全容は岩があって見えないのが惜しい。

…そんな俳句が詠まれた場所なんだと、どっかの立て看板に書いてあったっけ。

気がつけば周囲は、日の出をおがむ人々でこんなにも賑わっていた。

初日の出をしっかり目におさめたので、車にもどってマカロニを茹でた。

人々がぞくぞくと帰っていくのを眺めながら、ホッフホッフとそれを食う。

 

食後は鵜殿漁港の釣りスポットを探してみたが、結構よさそうだなという場所はどこも立入禁止になっていた。

釣りしてる人もいるからOKなのかと思っていたけど、そんな場所で気分のよくない釣りはしたくない。

歯磨きをしながら早々に鵜殿漁港を離れる決断をし、七里御浜を北上していった。

 

くねくねリアス式海岸

ズドーーーンとひたすら真っすぐに長い海岸をいく。

どっかんと晴れた空に元旦の太陽、きらめく水面を横目にすすむのは、心地いいことこの上なしだ。

この景色を写真に収めたいとも思ったが、やはり今日も釣りがしたくて、好ポイントに着くまで車をとめる気にはならなかった。

 

そうしているうちに22kmもあった七里御浜もいよいよ終点となり、ここからは入り組んだリアス式海岸にめり込んでいく。

おぉ…ここまでは海の景色を平坦に楽しんでいたが、ゴツゴツした岩場をこえる山道から見下ろす海の景色といったら…

最高じゃねーーかぁーーーっ!!

遠くつづく真っすぐな七里御浜の全貌が、ここからはハッキリ確認できた。

ちょっと車をとめてこの絶景とコーヒーを愉しんでいたら、秋田に帰省しているオクサマからテレビ電話がかかってきた。

「あっけまして、おめでとぉぉぉ!!」

親戚のあつまる実家から、子供たちが大はしゃぎで新年の挨拶をしてくれた。

こちらも絶景をカメラで見せてあげると、ひょぉーっ!と歓声をあげている。

しばしカメラ越しに話をして、楽しいあけましておめでとうの儀となった。

 

あたしか温泉あたしが一番

上下左右くねくねと入り組んだ山と海の道をいく。

途中なんのために設置されたのかフシギなほど山深い場所にある公衆便所を見つけ、朝の用足しの儀を執り行った。

オッサンの乗ったSUVがトイレ横にずっと停まっていたのがすこし気味悪かったが、まあ僕も誰かから見たら気味悪いオッサンの一人であろう。

 

この広大なリアス式海岸エリアにも、地図上でチェックしていた堤防釣りポイントがたくさんあり、ひとつひとつ寄りながら進んでいく。

だが寄ってみたらそこまで好条件じゃなかったりと、はじめてのエリアでの釣り座はそう簡単には決まらない。

松崎港…磯崎港…新鹿漁港にはすこし期待していたが、ここで一日がんばれる確信がもてないなか1200円の駐車料金が引っかかって断念。

これは釣り座を決めるのも難航しそうだなと少し焦りを感じながら走る。

 

ふと「温泉」の文字が目に入ったような気がした。

いやまだ風呂に入るような時間じゃないけど、この旅では年末年始でなにせ風呂屋さんにフラレ続けてきた。

入れる風呂を見つけたら、時間がどうであろうと、すかさず入っておかないといけないのだ。

Googleマップで情報を調べてみたら「あたしか温泉」という風呂が出てきた。

さっき見た「温泉」の文字はどうやら気のせいではないらしい。

だがしかしクチコミには古い情報が多く「閉館している」とか「10年以上まえに廃業」とか「臨時でオープン」とか、どうも今の状況がわからない。

温泉との看板を見たような気がした地点からは数百メートル進んでしまっていたが、ひきかえして見に行ってみることにした。

 

そして確かに「温泉」の表示をみつけた。

そこから看板の矢印をたどって、細道に入っていく。

ホンマにこんなところに温泉があるのか?

情報どおり廃業しちゃってるのか?

そして元旦だぞ?

 

…あった!しかも電気がついてる!

おぉ!!と驚いて写真を撮っていると、館のわきからタバコをくわえたオッチャンが出てきた。

「お風呂にきたの?」と聞かれたので、

「やってるんですか!?」と質問で返した。

「ちょうど今日からやってるよ!」

いまボイラーに火をいれたところでヌルいけどすぐ温まるよ!入っていってよ!とのことだ。

もちろん入らせていただきたい、ありがたい!!

 

なんと元旦の一番風呂だった。

人混みが苦手で、とくに風呂の混雑がいちばんキライな僕からしたら、これはまたとない最高の状況である。

やはり臨時での営業なのだろうか、入浴料も1000円と高め。

だけどいいじゃないか、元旦に営業してくれているだけでもありがたい。

なんたって独り占めなんだから!

ココは正しき温泉である、ということを示す証明書とおぼしき表示があったが、湯のシロウトな僕にはあまりよく分からない。

脱衣所はまだ暖房も入っていなくて、素っ裸になったら極寒であった。

 

急いで浴場に向かう。

扉をガラガラッと開くと…おぉ!!

めちゃくちゃ広くて立派な浴場である。

浴槽は大中小と3つあり、流れ込む滝からは湯気があがっていて、見るからにスバラシイ。

大浴場をぬけた外には露天風呂があり、若いニイチャンが水面の落ち葉をせっせとかき集めていた。

「ここはまだ冷たいんじゃないかなぁ」という。

 

じゃあまずは内湯の、いちばん大きな風呂から!

うきうきで足をそっと入れてみると、ん?んんん??

水だ。冷たい。

 

じゃあ中くらいの風呂は!?

みっ、水だ。

 

ぬぬぬ…じゃあ小さい風呂!

ん、かろうじて温もりがある。

やっと両足をいれ、ここに流れ込んでいる滝のほうへと近寄ってみる。

おぉ…少しずつだが温かい。

滝からの流れ込みは、ちゃんとした「湯」のようだ。

ようやく腰まで湯につかることができた。

が…

  

滝の湯はおそらく50℃くらいか、滝に打たれるには熱すぎる。

だが離れると水である。

いくぶんか温かいが、水なのだ。

寒いから滝に近づくと熱い、離れると寒い冷たい、あぁさむい、あぢっ、けどさむっ、あぢぢ…

背中を滝のほうにむけると腹が冷え、だから腹を滝にむけると背中ちべたく…

こんなのを10分ほど繰り返しているが、このデカい風呂が完全に温まるには2~3時間はかかるのではないか。

外ではニイチャンがせっせと落ち葉を集めたり作業をしている。

これは…まさに…開店準備の光景ではないのか。。。

 

そういえば「シャワーから湯が出るまでに時間がかかるから、しばらく出しっぱなしにしといて!」と言われていたのだった。

さっと風呂から出てシャワーの湯のカランをまわし、ささっと風呂にもどる。

そして数分おきにシャワーの温度を確認しにいったが、10分たっても水のままだった。

もう諦めてシャワーをとめ、滝の流れこむ一番ちいさな浴槽から湯をすくい体を洗う。

30分ほど経った浴槽「小」は、ようやく温かいといえる程度だ。

中と大は…まだまだ水である。

…んなろーーー!!

 

冷えたでも温まったでもないカラダは、脱衣所に出るとどんどん冷えていくのが分かった。

もう大急ぎでカラダをふき、保湿をする余裕もなく服をきてロビーに出る。

ロビーにあるストーブの前には髪のぬれた白髪のおばあさんがいた。

女湯の一番風呂だな。

こちら男湯の一番風呂ですドウモ、などと声をかけるでもなく、なんとなくストーブにも当たらずに車にもどる。

たったひとりで元旦の一番風呂なんて体験はもしかしたら僕の人生のなかでコレっきりかもしれないから、もっと浴場の写真とかも記念に撮っておけばよかったな。

館を出てからそう思ったが、なんとなく、戻ることはなかった。

 

車内で保湿剤をぬり、朝いれたコーヒーをのむ。

風呂より水筒の少しぬるくなったコーヒーのほうが熱いことに、すこし笑った。

 

とてもいい思い出になった「あたしか温泉」。

湯温バッチリ本領発揮のときに、また家族で来たいな。

ぜひ続けていってほしい。

 

僕ぼっくりが2025年の一番風呂だぞエッヘン。

 

大配を望む道々

このさきは離合のむつかしい細道をゆく。

そしてリアス式海岸のえげつない景色に「ひょーーーう!」と声が出てしまう。

これがホントに自然の造形なのかと不思議に思えるほど真っすぐに切り立った崖、碧すぎる海とくだける白波、深い深い森の緑…

僕はいま「大配」(オハイ)というこの絶景の地に向かっている。

もう叫ばずにはいられないのだ。

 

だが道の険しさと見通しの悪さもあり、車をとめて写真を撮ることができない。

写真に残したいムズムズをかかえつつ進み、絶景ポイントを過ぎたところでパシャリとやるしかなかった。

これは次回ココに来たときの課題だな、この景色はすばらしすぎる。

そして、ぜったいに家族でまた来よう。

険しい山道で絶景に絶叫し、また集落におりるの繰り返し。

山と村をくりかえしながら進み、目当ての堤防釣りポイントをめぐっていった。

 

遊木港二木島港甫母漁港

堤防に立ち寄っては様子を見て、釣りと車中泊がどちらも叶うか判断しながら進む。

賀田は海辺のグラウンドにトイレもあり良さそうだった。

グラウンドではじいちゃんばあちゃん、おとうさんおかあさん、おにいちゃんおねえちゃん、ちっちゃい子らが世代をこえたゲートボール大決戦をくりひろげていて大いに盛り上がっている。

海の景色もいい、だが釣りにはすこし浅いか…

何度かグラウンドと海辺を行ったり来たりしながら車中泊地にするか悩んだが、なんとなく山道トイレの気味悪いオッサンになっちゃってる気がして、ゲートボールの歓声のなかで賀田をあとにした。

 

そのさきの古江漁港は釣りのできる時間帯が制限されていたし、三木浦漁港の釣り可能スペースは混雑していた。

なんとも決め手なくここまで来て、どんどん細くなっていく道にも不安を感じはじめている。

まだこのリアス式海岸ルートをすすんで次の九鬼漁港にいくか、広い熊野尾鷲道路でズドーンとこの山を通過してしまうか…

ここまでずっとオハイを望む絶景に導かれて来たが、このさき進退ままならぬ状況も考えられた。

進みたい気持ちも強かったが、安全をとった。

だがいずれ、ここにもまた来よう。

 

安住の釣り座にて

熊野尾鷲道路という高速道路でびゅーんと進んだ先は、なんとも見慣れたいつもの釣り座だった。

いつものスーパーは元旦の休業であったが、なにかしら食うモノはある。

ビールもある!!

この国内最安ビールを呑んだ時点で、きょうの車中泊地は決まった。

結局いつものホームグラウンドだ。

ここまで4日間釣りをしていて分かったのだが、初めての場所で思ったように魚を釣るのは難しい。

海底の地形や水深、潮の流れや時間帯による傾向などなど、把握していくには時間がかかるのだ。

ここなら…それなりに分かる。

 

ビールを1缶あおったら、ライフジャケットを着てさっそく釣りをした。

ロッドは完全に主戦力となったベイミクス、リールはダイワ23レグザLT2500にPEライン0.6号リーダーフロロ12lb。

10gのジグヘッドにはアンバランスな2inchシャッドテールワームでも、いつものオオモンハタちゃんが会いにきてくれる。

癒やしだ、ここは完全に癒やしだ…

万年雑魚釣り師に、新年のあいさつに来てくれる小さなオオモンハタちゃんたち。

今年もよろしくな。

お、小ガシラくんもよろしくな。

 

昼の2時過ぎ。

おやつを食べながら、こうしてのんびり釣りをする。

最高に楽しい、最高の癒し。

ありがとう、海!

 

ひとしきり遊んだら、夕暮れの晩酌タイムに突入。

安物のビールと、安物のアテ。

オッサンはこれでいいんだよ。

夜になったら車内でラーメンとなんかよくわからん汁物をつくり、すべてが満たされると眠気がきた。

まだ7時頃だが、この眠気には逆らわないでおこう。

なんとも充実した元旦であった。

 

 

続く