
満たされた人
昨晩は7時頃には寝落ちしてしまったので、やたらと朝早く目が覚めた。
どんぴしゃの朝マヅメってやつだ。
ゆっくりと明るくなってくる空をながめながら、温かいコーヒーをいれる。
コーヒーだけで釣り開始しようかと思ってたのに、なんとなくラーメンも茹でる。
ついでによくわからん汁物もつくって飲み、寝起きのオヂサンは整った。

釣り車中泊のオヂサンは、こんなので良いのだ。
その間にも空はすっかり明るくなっていった。
腹ぱんオヂサンは、ようやくのそのそと車から這い出る。
ライフジャケットを着用し、竿を手に取った。
竿にはルアーがセットされているし、ライフジャケットのポケットに釣具一式がすべて仕込まれている。
この釣り車中泊旅もいよいよ5日目になると、準備はすでに万全であった。
1月2日の早朝、なかなかの寒さだ。
さあ1投目。
…いきなり根掛かり。
数分ねばったがウンともスンとも外れないので、PEよりリーダーを弱く設定している強度バランスを信じて引っぱる。
切れたのはスナップ付近だったので、最善は尽くしたか。。。
また仕掛けを結ぼうかと指先に集中するが、寒さでかじかんで上手くいかない。
が、この釣り旅で5日間も海をながめてきた僕はそれだけですっかり満たされていて、もう釣れても釣れなくてもどうでもよくなっていた。
そんな満足感のなかで、かじかむ指先の苦闘に自然とストップがかる。
ここで5日間の釣りは、実質的に終わったのであった。
絶景ひとりじめ
釣り具をすべて仕舞い、朝のトイレを済ませたら、このあたりで過去に大好きになった景色を見に行きたくなった。
秋にチョーナンと釣りを楽しんだ、思い出の浜である。

もう釣り竿は出さない。
ぼんやり海をながめるだけで満足だわ。

すこしづつ暖まってきた風のなかで、砂利の浜をさんぽする。
見渡すかぎり、だーれもいない。
こんな景色を独占だなんて、ゼイタクだぞ。

1時間ほど海だけをながめて過ごしていると、いよいよ旅のおしまいに向かう決心がついた。
帰ろう。
寄り道しちゃう
砂利の浜を発ち、いよいよ帰路につく。
もと来た道をもどるのだが、ところどころにある馴染みの漁港が気になってしまって。
で、ついつい寄り道をしちゃう。

べつに竿を出すでもなく、ぷらぷらと歩いて回るだけなのだが。
堤防があるとついつい先っちょまで行ってしまうのは、釣り人のサガだろうか。

先っちょでは老夫婦が小ゴトを言いあいながら肩をよせて釣りをしていた。
なーんも釣れないよぉ、とジイチャンが言う。
普段は見えない海底が丸見えなほどに水が澄んでいて、チヌのカップルがゆうゆうと泳いでいた。
腹が減ってるでもないんだけど、ここから4時間ほどのドライブになるので、前もって腹を満たしておくことにしよう。

男ひとり車中泊旅はついついラーメンが多くなるけど、外で食ったら倍ウマイんだから仕方ない。
ラストラーメン、グッバイ!
まあまた寄り道して、サンマ寿司も食ったんだけどね。

思い出だもんね。
ありがとう熊野灘、グッバイ!
あけましておめでとう
5日ぶりの家には、帰省中のオクサマとムスコたちはまだ帰ってきていなかった。
愛車の旧型セレナから5日分の衣服やゴミ類をおろし、寝袋やダウンジャケットなどを干す。
そして釣り具を洗っていると、我が家のポンコツ軽が帰ってきた。
「あけましておめでとぉーーーう!!」
とぉーーーう!!のところがライダーキックになっていた。

また賑やかな日常が帰ってきた。
ひとりもいいけど、家族はやっぱり最高だ。
2025年も皆でめいっぱい楽しむよー!
おしまい